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黒馬に乗った御曹司(13)












「牧野も災難だったわね……」


週明けの月曜日
朝のミーティングが始まるまで
つくしは美里とコーヒーを飲みながら
この週末の出来事を話す

「仕事ですから……
主任のお父様はその後どうなんですか?」

「うん。年が年だからね、色々検査してもらおうかって話になって
今、結果待ち。特に何もなければ今週退院よ」

美里の言葉につくしも元気になっているなら
良かったと心から喜ぶ
そんな彼女の笑顔が一人っ子の美里には
妹のようでまた可愛い。

「今度さ、アタシが奢るから
飲みにいこうか。迷惑かけたし西田さんも誘って」

その名が出ただけで顔が赤く染まるつくし

美里の心を罪悪感が支配する。

週末になる度に父親の見舞いに来てくれていた
来なくて良いと言っても
僕はお父さんに会いに来てるんだと言っては
父の将棋の相手や話し相手になってくれる

「……あのね、牧野…「牧野」

何かを言おうとした美里に顔を向けていた
つくしが名を呼ばれ、ビクゥッと肩を揺らした

「おはようございます。副社長」

「おう。佐竹、西田が呼んでたぞ」

スケジュールの打ち合わせなら
始業してからで問題ないはずだ

一体何しに?と思うが副社長が言っているんだから
急ぎなのだろう。

「わかりました」

「秘書課に居るはずだ」

美里が頷いたのを見て、つくしが後ろから付いていこうとするが

「お前はこっちだ」

「うっ………
もう、大丈夫ですってば!!」

司に腕を掴まれるとそこから全身に
電気が走り、何かくすぐったくなってくる

「……ほんとに、大丈夫」

顔を俯かせた彼女の耳が赤く染まる

「大丈夫って顔してねぇぞ」

どうして何とも思っていない男に身体が反応するのか不思議でたまらない

耳元で囁かれると、もうだめで………


つくしの姿を見ながら
これはいつになったら薬が完璧に抜けるのかと
司も不思議で堪らなかった。























「"効果は抜群のようね"」

………呑気か

「そんな事を言ってる場合では無いんです
私生活にも支障が出ています」

その日の午後、司が母、楓に電話をかけた。

「"あなたが香水を変えれば良いのでは無くて?"」

「……薬が抜ければ関係ないでしょう」

「"それは私にも解りません。
大体3日もあれば治ると思いましたが
今も効果が持続しているなら他に原因があるのでは?"」

「自分が飲ませた媚薬のせいなんだ!
もっと心配してやれよ!!」

思わず怒鳴った司に対して母親はどこまでも
冷静に返してくる

「"人聞き悪いこと言わないで頂ける?
私は紅茶をプレゼントしたのよ"」

「そりゃ、見た目はそうだが!!実際は」

「"見た目が全て。彼女は紅茶を飲んだら体質が変わっただけです"」

我が親ながら会話しながら苛立ってくる

司はそこで彼女から言われた言葉を思い出した

「見た目が全てなら、あなたの願いは叶いませんね」

「"司、それについて話は聞きました。
私も当初は何が不満なのかと悩みましたよ"」

本当かよ。と耳を疑う


「俺に整形でもさせるか?」

鼻で笑ってそう言えば楓が「しなくて大丈夫よ」と優しく言う

初めて聞くと言っても過言ではない
母の優しい声音に司が驚く

「"寧ろしても意味なんかないわ。
だって貴方は内面を嫌われて居るんですから"」

「………何だって」

期待した俺がバカだった

「"玄孫期待していますよ"」

「あんた今までなに聞いてたんだ………」


会話の内容を全て無視した言葉を残して
無情にも電話は切れた。

















「副社長?」

恐る恐る書類を届けにやって来たつくしは
デスクに座って何やら考え事をしている司へ
声をかけた。

「……何のようだ」

「仕事の用ですね」

「………」

無言で出された手に書類を乗せた

「お前、西田が好きか」

「へ?!は!?え!!!」

唐突に言われた言葉に動揺を隠せないつくしを
司が書類から目線だけ上げて見る

「そうか」

「………副社長?」

いつもならもっと酷い言葉が降ってくる
なのにこの大人しさ

もしかして、この前私が船で体調崩したことに
責任を感じてる?

「いつまで居るつもりだ。目障りだ出ていけ」

「申し訳ありません。失礼いたしました!」

つくしは丁寧に扉を閉めてから

人間簡単に変わるわけ無いか。と心の中で呟く

だって、自分自身がそうなのだから


変わるってどうやるんだったけ
そもそも自分から人を好きになったのは
何年ぶり?

つくしは、ふぅ……と息を吐くと
隣の秘書課へと戻っていった。
















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