fc2ブログ

黒馬に乗った御曹司(12)









牧野さんへ

息子が貴女に酷いことを言ったと聞きました。
私からもお詫びします
本当にごめんなさい。

これは私が贔屓にしている専門店でオリジナルで
ブレンドして頂いたものです。
お口に合えば幸いです。
道明寺 楓






飲むよ

そりゃ飲むよ

中をあけたら、とっても良い桃の香りがして
気付いたら2杯も飲んでた。

家ならティーパックを乾燥させて
もう一回使いたいくらい美味しかった

飲んで15分くらいで身体がおかしくなったのだ。

疲れていたから何か身体と会わないものがあったのではとつくしは不安になる

どうしよ……死んじゃうのかなアタシ

そこへタイミング良く部屋のチャイムが鳴った
藁にもすがる思いで扉を開ければ
船内で給仕等をしてくれていた女性

「牧野様?どうかされたんですか?牧野様!?」

やば、もう、力入んない

女性に支えられてソファの横になると
彼女が手際良く体温や、脈を図ってくれる

流石、この船に乗っているだけある

「……船酔いでしょうか」

突然の体調不良に自分でも何が何だか解らない

そこに現れた副社長
彼の香水か、フェロモンのせいかは知らないが
全く好きじゃないのにそのニオイを吸い込むと
全身に電気が駆け巡り触れられた瞬間
自分の意思とは関係なく変な声が出てしまった。

車に乗せられてからも、副社長から出来るだけ
離れたかったのに
普通の車より広いリムジンでも身体が疼いて


………嫌いすぎて、副社長アレルギーにでもなったかしら
















「ふざけんな!!アンタ見境無さすぎだろ!!」

………あ、生きてる

つくしが目を開けると、見たことのない天井が
広がった。


「はぁ?!死んだらどうすんだよ!!は?アレルギーテスト済?それなら……ってなるワケねえだろッ!!」

どうやらこの声は隣の部屋から聞こえて来ているようだ。
つくしは、ゆっくりベッドから起き上がると
声のする方へ向かい隣の部屋に繋がる扉を開けた

「あ?おい!切るな!待てババア!!って切りやがった!クソッ!」

「やれやれ、28にもなって母親をババアとは
坊っちゃんも進歩がありませんねぇ」

「うるせぇよ!!俺だって呼ぶ気なんか……
起きたのか」

「老人をいじめてるんですか………?」

つくしが見ていることに気付いた司の問いに対し
そう問い返した彼女をタマと呼ばれた老婆が
面白そうに目を細めた

「……そんだけ生意気言えりゃ心配ねーな」

口許をひきつらせながらも、彼女が
目覚めた事に一安心した司がソファーにドサッと
座った

「お加減はいかがでしょうか牧野様」

腰の曲がった老婆がそう言いながら
つくしへと近付いてくる

「あ、お陰さまで
ご迷惑おかけしました」

頭を下げた彼女にとんでもない!と言う老婆に対して

「出されたもんホイホイのんでんじゃねーよ」

と司


「坊っちゃん!!何て事言うんだい!!」

「い、良いんです!!自分の体調も考えずに2杯も飲んだアタシが悪いので」

つくしの言葉にタマと司の「「2杯?!」」と
声が重なる

「え、そんなに変ですか……」

「……使ったティーパックはお1つでしたよね?」

茶葉は少量だった。
一杯飲めば味が薄まるはずだ

タマが聞くと、つくしは「ちょっと薄かったかなぁ?」と首をかしげる

「貧乏人めが」

「坊っちゃん!!……とにかく、ご無事で何よりです」

「ありがとうございます……」

つくしは少し気まずそうな表情をしてから
タマには丁寧に頭を下げた。
それから視線をさ迷わせ何かを探す仕草をする

「すみません、私のバッグは」

「預かっております。すぐに持って参りますね」

「大丈夫です。自分で取りに行きます!
あ、あの紅茶……持って帰っても」

自分には合わなかったが優紀なら飲めるかも知れない。
香りも味も最高だったし、捨てるのは勿体ない
貰った相手が社長なので我が家のお客様用にでも……と考える


「もうねぇよ」

タマが言うより先に司が言った

「へ?!何でですか?!」

「処分するに決まってんだろ」

「あたしが貰ったのに!!」

つくしは信じられない!と司を批難する

「それ飲んで倒れたアホは誰だ?」

鋭い視線と共に低い声で言われ、ウッと何も返せなくなった

「アタシはダメでしたけど
友人になら大丈夫かなと」

「残念だったな。もうねぇよ。」

二人のやり取りを黙って見ていたタマが
つくしの側により「何かお食べになりますか?」と声をかけた

事情が話せないので仕方ないが
彼女からすれば社長に貰ったものを捨てるという
発想は無かったのだろう。

坊っちゃんももっと素直になれば良いものを

「いえ、これ以上お世話になるわけに
行かないので帰ります。今ならバスもあるでしょうし」

「バスだなんて体調が悪いのにそんな事させれやしませんよ!」

「いやいや!本当に!大丈夫なので!!」

黙って見ていた司が立ち上がり彼女の前に立った

「副社長にもご迷惑おかけしま……」

な、何でいきなり抱き締めるの?!

普段なら強く抵抗するのに何故か身体から力が
抜けていく

この香り……
良いニオイ……

深く吸い込んだ彼女の瞳がトロンと潤み始めた

「………大人しくタマの言うことを聞け」

司は一言そう言うと彼女の身体を解放し部屋から出ていく。

支えを失ったつくしは足に力が入らず、その場に
座り込んだ。











………可愛かった


自室に戻った司は薬の効果とはいえ
自分の腕の中でおとなしくなった彼女に
普段怒っている姿しか見ていないせいか
ドキっとした。

あの薬が完全に抜けるまで
つくしは司の香水の香りにも身体が反応するようだ

母親が私も仕組みは知りません。と断言した為
本当に解らないんだろう

「…どうするか」

会社を休ませるか?
だが、万が一他の男のニオイに反応したら?

あの母親が原因は解らないと言っているのだ
なきにしもあらず

少し前までならつくしが誰とシようと司には関係なかった。

しかし今は

"運命の相手"

「…………」

他の男等、許せるわけがない。

強気な彼女が自分に堕ちる姿に支配欲が
満たされていく

彼女の気持ちは今は西田にあるが
二人が両思いになる可能性はつくしには
悪いが限りなく0に近い。

母親に変なものを寄越させない為にも
自分が動くしかないと司は考えていた。











































関連記事
スポンサーサイト



0 Comments

Leave a comment