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half━18






司の嫌な予感は日本に戻ってから当たった。


「……どういうことだ」

母親に敵意の籠った視線を向けるも
それが通じる相手ではない。

「明和は切ったんじゃねえのかよ!!」

「口を慎みなさい。確かに、御姉様の花子さんとは距離を取りましたが、凛子さんは優秀な方ですよ」

楓の横で笑みを浮かべる凛子に虫酸が走る

「貴方にもいい刺激になるでしょう。
何も牧野さんの任を解けと言ってるわけではありません。ただ、凛子さんと仕事のパートナーとして」

「結構です。一人で頑張ります」

楓の言葉を最後まで聞かず、司は立ち上がった
見え透いた魂胆に反吐が出そうだった

「司様」

ついてきた西田に呼ばれ彼を睨む

「今後のパーティー等のパートナーも
彼女と出席していただくことになります」

「俺はアイツしか連れていかない」

西田の目を見て宣言するが
彼は相変わらず表情を変えることはない

「司様、牧野さんは付き人です」

「そうだ」

「ならば、勘違いさせるような行動は
慎むべきかと」

秘書の忠告は最もだと思う。

「解ってねぇな」

西田は黙ってその言葉の続きを待った

「勘違いさせてえからやってんだろ」

「司様………それは」

「俺にはアイツしかいらない」



















「あちゃ………やっちゃった」

普段ならやらない失敗だ
考え事をしながら料理したせいで
晩御飯のメインを焦がしてしまった

「あーっ!もういい。今日はお茶漬け」

こういう日は潔く諦めるに限る

戸棚から茶碗を取り出し、お茶を沸かす。

「………」

西田に呼ばれて、遅くなったが約束通り
パーティーのパートナーを用意できたと告げられた。

それは、彼に見あった女性が見つかったということ

隣に立って、微笑み合う人

「……実家、帰ろうかな」


「北海道から帰ってきたのか?」

独り言に返事が来たことに驚いた
つくしが振り向くと司が「ただいま」と言う

「おかえりなさい……」

コートを着ている姿につくしは慌てて
歩み寄ると、それを受け取った。

「家族に会いに行くのか?」

「……はい。」

出ていく。と言えないのは何故なのか

「俺も行く。新年の挨拶しなきゃいけねーだろ」

「いや、司様が挨拶に行くような相手じゃないですから
私一人で大丈夫ですよ」

「んな言い方すんな、お前の親だ」

「…お気持ちは、有難いのですが
本当に」

「邪魔か?」

司の言葉に「いや、邪魔では……」と答える

「なら良いだろ」

今度の土曜な。そう言ってネクタイに手をかけた司を見ながらつくしは黙って頷いた。

仕方ない。ママに電話しよう。

世話係が居なくなったら不便かけるかもしれないが
もしかしたら、パーティーのパートナーになる
令嬢と深い仲になるかもしれない。

その時に自分の存在は邪魔だろうから


……新しいバイト探さなきゃ

「牧野、お前いつまでいんだよ」

「へ?ぎやあっ!!何でシャツ脱いだんですか!!」

「何でって、風呂入るから
一緒に入るか?」

「ば、バカ言わないでくださいっっ!!!
失礼しました!!!」

普段なら話が終わったらすぐに出ていくのに
ボーッとして気が付かなかった


「不覚」

呟いてから、今度はぐぅーっとお腹が鳴る

「……お茶漬けたべよ」

ご飯を食べようと再びキッチンに戻り
茶碗にご飯をよそってから、手が止まった

漬物に白いご飯

「………」

おにぎりにして部屋で食べよう
リビングだとお酒を取りに来た司と会ってしまうから

「18の高校生が酒を呑むってのが
不健全な気がするけど」

梅干し、おかかを混ぜ合わせ具を作ると
お米を三角に握っていく

海苔を巻いて3つ作ったところで
1つが宙に浮いた

「…なんだこれ」

「その気配を消して近付いてくるの何なんですか……」

あんたはアサシンか?と問いたくなる


「消してねーよ。消せたら苦労しねえっつーの」

そりゃまぁ、そうかもだが
つくしが考えている間に「食える」と何気に
失礼な事を言いながら
おにぎりをペロッと平らげてしまった司が
残り二つを見る

「……また握りますからどうぞ」

「そしたらここで見てる」

「…お好きにしてくださいな」

「タマみたいな言い方すんだな」

「そりゃ、どうも………」

つくしは、計画通りにいかないと内心嘆きながら自分のおにぎり作りに取りかかった。

















西田は明和凛子を全く信用しない司に
何かやられたのかと疑問を抱いた。

確かに、姉である花子様とは
色々あったが妹である凛子様の
明和を継ぐ者としての心構えや経営者としての
センスにはこちらが驚かされる

彼女と居ても損はないはずだ


「………」

これからの為にも盗める技術は盗んで欲しい
それが教育係である西田の願い

「あなたは何れこの会社のトップに立つお方です。あまり敵は作らぬように」

「はっ……今と何が違うんだよ」

バカにしたように自分を見る司に
彼の闇を見る
孤独とは周りを見渡す目を閉ざしてしまう。

「自分の思うように駒を動かしたいなら
強い駒になるのではなく、プレイヤーになるのが一番だと私は思っています」

「…?」

いきなり何の話だ。と眉を潜めた司に西田は
続けた

「己を駒だと諦めるか、それとも今のプレイヤーを引きずり下ろしその場を勝ち取るか。すべては貴方様次第。」

「………」

要は、グダグダわがまま言ってないで
やるべきことやって楓を引きずり下ろせと言うことか

「今一度、よくお考えを。それから次の日曜日に明和様とパーティーに出ていただきます。」

「…決定かよ」

西田は頷くと「よろしくお願いいたします」と言って執務室から出ていった。
























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2019/09/11 (Wed) 18:02 | EDIT | REPLY |   

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