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half━17






少しずつ意識が浮上していく感覚
今何時か気になり、少しだけ目を開けた。


だが、時計より先に目に入ったのは
パソコンを見る端整な男の真剣な横顔

思わず見惚れてしまう


「悪い、起こしたな」

つくしの視線に気付いた司が椅子から立ち上がり
彼女の元へやってくる

そこでようやく意識がはっきりして
慌てて反対を向いて顔を布団で隠した

「……何やってんだ?」

ベッドが沈んだ感覚で司が座ったのに気付いた

「あ、あの、ずっといたんですか?」

「体調悪いお前置いてどこ行くんだよ」

「……気にしなくて良かったのに」

寝顔を見られたのは初めてじゃないのに
今はとても恥ずかしい

「なんか食うか?」

司の手がつくしの髪を撫でる

その手つきがあまりに優しくて
彼女は泣きそうになってしまう

「だ、だいじょうぶデス……」

苦し紛れにスマホに手を伸ばすが見当たらない

「あたし、携帯取りに」

「体調悪いんだろ?んなもんつつくな」

いや、それはそうなんだけど

「……て、手持ちぶさたで」

「なんか、おかゆ?ってやつ作らせたから
とにかくそれ食え」

「でも」

つくしが何か言おうとすると
鋭く冷たい視線が彼から向けられた

それは、初めての事で………

「言うことを聞け」

「……はい」


別に急ぎの用事もないし、いっかな………

彼女が起き上がろうとすれば
当然のように司が支えてくれる

「あの一人で歩ける」

「黙って甘えてりゃ良いんだよ。
俺が居るんだから」

察してくれよー!!
髪はボサボサだし、汗くさくないかな

心でどんなに願っても通じる訳もなく
つくしは渋々と部屋にある小さなテーブルの前へ座った















「復活!!」

薬が良かったのか、食事が良かったのか
それとも両方かは解らないが咳は治まり身体のダルさも無くなっていた。

「看病した人間が一流だからな」

「……感謝します」

司の看病は確かに献身的だったし
有り難かったが
とてもじゃないが休めた状況ではなかった

それなのに同じベッドで寝ようとするし
全力で拒否したけど

「早く着替えろ出掛けるぞ」

「スノボしないんですか?」

ラフな格好をした司に訊ねると
「病み上がりにさせられねーだろ」と返される

「だったら部屋で休みたいです」

「10分後に玄関な。あと、お前のスマホあったぞ」

投げられたスマホを慌ててキャッチすると
司は早くしろよと言って部屋から出ていった。

中を確認すれば
織部からの返信が来ていた

好きなうまい棒味でとんかつソースと答えた彼は
言い訳するように更に好きなんだよ。とメッセージが来ていた。

別に好みは人それぞれなのにと
思いながらラインを閉じると
待たせている司を思いだし、慌てて支度に取りかかった。













バンクーバーまでやって来たつくしは
はしゃいでいた。

「あ!写真撮って!!」

「またかよ?!もういいだろ!」

さっきから何枚撮らされたか解らない司が言うも
つくしは既にピースと指を2本立てて笑っている

「……聞いちゃねぇな」

そこで思い付いた司が彼女へと近づく
不思議そうに「何?」と訊いてくるつくしを
思い切り抱き寄せてから、彼はシャッター切った。

「な、な、なんで」

「お前な、俺をカメラマンとして
使おうなんざ100年はえーんだよ」

写真は嫌いだが、彼女となら良いかと思える不思議

「最初に写ろうって言ったら魂抜かれるとか言ったくせに」

「だからってあんなに撮らされるとは思わねえだろ!」

到着して一時間
病み上がりとは思えないほどの喜びよう
最初は可愛いな。と眺めていたが、あちこちで
撮らされてたまったもんじゃない。

「次撮るときはキスな」

「!!なんでアタシが!」

一応休暇中だから堅苦しいのやめようぜ。と提案すれば、つくしはすんなりと受け入れ「道明寺」と呼んでくる

普通、そこは「司」じゃないのかと不満に思うが
使い分けされているのだから仕方ない


「そろそろ行くぞ。土産買う時間無くなっても良いのか?」

「困るっ!!」

司は焦って走り出そうとするつくしの腕を掴み
自分の手と彼女の手の指をしっかり絡ませ握る

「迷子になったら帰れねーだろ?」

「……うぅ」

悔しそうな表情が面白い。
他の女なら自分から腕を絡ませてくるのに

「どこ行きてーんだっけ?」

「オリジナルブランドを扱ってるお店!!」

「…俺が居るんだからもっと良いとこ行こうぜ」

「何か卑猥に聞こえる。あんたが言うと」

「へぇ。お前俺使って卑猥な事かんがえてんのか」

「ちがっ!!「道明寺さん?」


後ろから聞こえた女性の声に二人は
足を止めて振り返る。


つくしが手を離そうとしたが司が
それを許さない。

「その節は、姉が失礼してしまいまして
改めてお詫び申し上げます」

「お気になさらず」

__明和凛子

明和花子の妹だが二人は全く似ていない

キツイ顔立ちの姉、花子に比べて
妹の凛子はややタレ目
しゃべり方もおっとりしていて
涙袋にある泣きホクロがセクシーなんだと
いつだったか総二郎とあきらが話していた。


「そちらのお嬢様が、妹さんですか?」

「貴方には関係ないことだと思いますが?」

凛子の問に司はつくしをその背に隠す
その姿に凛子はクスッと笑って「それもそうですね」と言ってから「邪魔してすみません」と
二人の前から消えた。


「………綺麗な方ですね」

司はつくしの言葉に「ああ」と適当に返事する

なんだろう、何か胸騒ぎがする

「男の人ってみんな、あーいう人好きだよね」

「え?ああ。」

偶然会っただけだと思えばそれまでだが……
何にしても、西田に一度連絡するしかないか

結局、どんなに頼りたくなくても
力が無いと何にもできねぇ

はぁ……と息を吐くとつくしを見た

「……」

先ほどまでの元気はどこへやら
黙って立ち尽くす彼女の姿に司が首を傾げる

「どうした?腹痛いのか」

「へっ!?あ、いや、何でも!!それより、良かったんですか?せっかくあんな美人が声かけてくれたのに!!今ならまだ間に合うかも!!」

司は凛子が消えた方向に視線を向けた
追いかけて何を聞くのか
ただ自分が不愉快だったと、何か嫌な感じがした以外これといった証拠もない。

「あたしの事なら、気にしないで」

「ここでお前を一人にする方がよっぽどアブねーだろ。行くぞ」

「だけどっ」

「良いから」

言われるがまま、手を引かれるままにつくしは
司の後ろを歩いた

自分の気持ちを自覚した今
胸の痛みと苦しさの原因が解るだけに
司と居ることが何よりも彼女は辛かった。


















「……」

別荘の部屋に戻り、自室でスタンドミラーを
使って手持ちの化粧品で出来る限りのメイクをしてみる。

泣きホクロ、似合わないなアタシ

タートルネックやシャツ等の服は
胸の大きく見せるためか
いや、凛子さんのは自前に違いない。

あーいう人に筆下ろし?してもらえば
さぞかし良い思い出になること間違いなしだ

アタシが、ずっと居るのもいけないんだ。

自分にプライベートが無いように
司にだってもちろん無い

つくしは自分のスマホを手に取り
織部からのラインを見る



"帰ってきたら、どっか行かないか?
牧野が嫌じゃなければ二人きりで"



いくら鈍いつくしでもこれがデートの誘いだと言うことは解る。

"もちろん!!嫌なわけないよ!楽しみにしてるね"

紙飛行機のマークが描かれたボタンを押すと
一仕事終えた気持ちになる。


「気付かれる前に忘れなきゃ」


やっぱり、付き人なんてなるもんじゃないな

帰ったら西田さんにポーカーフェイスのやり方教えてもらわなきゃ。

「化粧落とそ」

一人呟いて座っていたイスから立ち上がる
ガラス戸に映った自分の顔が酷く辛そうだったのは見ないふりをして……………































拍手コメント下さった方へ

教えてくださりありがとうございました‼️
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